西加奈子初期3作品
サムのこと
西加奈子さんデビュー作品【 あおい (小学館文庫) 】(2004年)に収録されていた作品。
20代の男女5人が、突然に死を迎えた友人サムの通夜に向かう。
誰かが亡くなった、日常の変化とは。
猿に会う
2012年に発売された短編小説集【 東と西 1 (小学館文庫) 】に収録されていた作品。
興味本位で足を運んだ占いの結果が当たっていなかった。
ちょこっと端っこを生きる20代の仲良し女子3人組の温泉旅行で、あるものに出会うまで。
泣く女
2012年に発売された短編小説集【 旅の終わり、始まりの旅 (小学館文庫) 】に収録されていた作品。
太宰治が大好きな、小説家志望の野球部の友人。
そんな友人となぜか訪れることになった太宰治の生家。
男子高校生2人が足を伸ばした竜飛岬で、ある女と出会う。
西加奈子さんの初期作品あるあるの関西弁が飛び交うリアル感がありながら、人間臭い登場人物たちに親近感を抱いてしまう3作品。
主要の登場人物
【サムのこと】では、スミ(角)、モモ(桃子)、キム(金)、ハス(蓮見)、アリ(有本)、サム(伊藤剛)の20代男女6人。
【猿に会う】では、なんでも四捨五入しがちなきよちゃん、前歯がラムネみたいなさつきちゃん、奥手で人の話を聞かないまこちゃんの20代仲良し女3人組。
【泣く女】では、太宰治が大好きな小説家志望の堀田、モテモテの野球少年ノリオの野球部男子2人組。
どれも微笑ましく、どこかリアルで、ユーモアある関係性が描かれていました。
学生時代の懐かしい友人との楽しい時間を思い出して、あの時代私もこんなことを思ったり感じたりしていたなと心温かくなる。
猿に会う
3作品ある中で個人的に好きなのが【猿に会う】でした。
女の子同士の恋に憧れを持つあるあるや、仲の良い友人関係の中での気を使う部分など。
「女子会」なんてものがあるほど女子の世界ってその世界観があって、それをうまく表現している部分にすごく共感していました。
西加奈子さんだからこそ、ドロドロしすぎないけど、リアル感がある描写が好きです。
「今」の魔法
本の帯には「西加奈子×乃木坂46」とあります。
乃木坂46の4期生、11人のメンバーがドラマで実写化とのこと。
【サムのこと】2020年3月20日〜
【猿に会う】2020年4月予定
「dTV」により独占配信されるそうです。
原作とはちょっと違う西加奈子の世界が少し気になります。
また、帯裏面には西加奈子さんのこんなコメントがあります。
いろんな意味で、過去の自分にしか書くことができなかった短編たちです。
皆さんが、どんな風に「今」の魔法をかけてくださるか、とても楽しみです。
西加奈子
デビュー作の【あおい】で10年前に【サムのこと】は読了済みでした。
10年ぶりにこの【サムのこと 猿に会う】で再読。
あの時は同じ目線で見ていた世界を今は懐かしく思います。
西加奈子好きにはたまらない、初期作品の短編集。
直木賞をとった【サラバ!】や、一番新しい長編作の【 i 】とは少し異なる西加奈子ワールドも、また良いのです。