2020年本屋大賞ノミネート作品
芥川賞を受賞した【乳と卵】の集大成となる作品です。
「自分の子供に会いたい」
38歳、パートナーなしの独身。大阪から上京し小説家としてデビューした夏子。
子供に会いたいという思いが芽生え、精子提供(AID)を決意する。
女性が求められる「役割」とは。
子供を願うということは残酷なことなのか。
様々な葛藤とともに答えを探していく。
登場人物の大阪弁がとてもリズミカルで、生々しくなりすぎず読んでいてそこまで苦痛になることが無かったです。
545ページにも及ぶ長編作品。
物語は二部作に分かれていて、第一部では、夏子の姉、巻子の娘である緑子が感じる「月経」や「シグルマザーの母親」への思いや不安。
【乳と卵】の物語がテーマになっている。
第二部では、精子提供(AID)がテーマとして話が進んでいく。
まさしく、「人が生まれて 生きて そして いなくなる」ことのすべてに思考を巡らせる物語でした。
女性に起こる、初潮時の不思議な気持ち、困惑、違和感。
初潮の「潮」とは。
食べていくためにホステスとして働き、「豊胸手術」について熱くなる母親巻子を気持ち悪いと思う思春期の緑子。
そんな緑子は、大人になることを嫌(厭)がり、困惑していく。
親にとって子供とは
様々な事情で片親になるという、シンママ、シンパパは今となっては珍しいことではない。
離婚を理由に子供と離れ独身となる親もいれば、未婚で出生の認知だけをし一切の関わりを持たない親もいる。
AIDにより生まれたという善百合子。
血の繋がらない父親から性的暴力を受けていた過去を持ち、実の父親を知らない。
「一度生まれたら、生まれなかったことにはできないのにね。」
子供は、生まれることを自ら望んでいるわけでもないのに、何故子供を生みたいと思うのか、
子供を生むということはとても暴力的だ。と主人公夏子に問う。
偏見を持たれがちでいて、国内ではあまり認知されていない「人工授精(AID)」
それでも欲しい、会いたいと思う「子」という存在とは。
ドロドロと色々な考えが駆け回る中、シングルマザーであり小説家である遊佐と娘のくらに心救われる。
「子供は自分にとって最高の存在で、最大の弱点。子供って恐ろしい存在だよ。」
これからの未来、子供を産むことに選択肢が増え、家族というものも多様化していくのでしょうか。
いつまでも親にとっての子供は、遊佐のような熱い親心で満たされてほしい。
読み終わった後、本当に色んなことを考えすぎて少し放心状態でした。
暖かく懐かしい家族描写もあり楽しめましたが、とにかく深い!!
個人的には第一部で焦点があたっていた緑子の成長について、第二部でももっと掘り下げて欲しかったかなという思いがありました。
表紙の絵
そして、表紙にあるこの絵!!
何に見えますか?
私は女性が後手で髪の毛をほどいてるように見えたのですが答えがわからず。
読んだ人それぞれに違った見え方がしたらとても面白いなと思いました。
感動の超大作「夏物語」。
これを書く私自身も母子家庭で育った身です。
日々感謝は尽きません。親って偉大です。