舞台は東京
東京を舞台に、4組の男女がテーブル越しに繰り広げる恋愛模様。
麻理恵(台東区、千代田区、文京区、江東区、中央区、墨田区)
バツイチの彼には今も同じ職場に「モトツマ」がいる。
聞きたいことが素直に聞けない。相手のことを何もわかっていない。
そんなもどかしさからついに一歩を踏み出す。
舞美(渋谷区、港区、目黒区、世田谷区、品川区、大田区)
一回り上の彼。いつも高級レストランに連れて行ってくれる年上の恋人。
なぜ私なんかと一緒にいてくれるのか、色んな疑問や疑いがありながらもそこには触れず。
食事中彼によくかかってくる謎の電話。彼にはある秘密があった。
由貴(北区、荒川区、足立区、板橋区、江戸川区、葛飾区)
学生時代から親しくしている男友達。そんな男友達への淡い片思い。
常に彼のことを考えていたり、誘いがあれば気づいてもらえなくても、少しおめかしをして出た。
ずっと迷い続ける中、意を決して行動に出る。
朔美(中野区、杉並区、新宿区、豊島区、練馬区、武蔵野市)
お酒の勢いで体の関係を持ってしまった長い付き合いの男友達。
そんな友人に好きな女性が出来た。自分の気持ちに気づいていながらもそれを隠した。
気持ちに蓋をして友人の幸せを願った。しかし衝撃の事実を知ることになる。
更に4組の作品とは別に
「メロンソーダコーラ」
「友達でいられない夜に」
「溶けていく」
の3つの短編小説が収められています。
好きだからこそ
好きだからこそ、見栄を張ったり、素直になれないことってありますよね。
相手にどう思われるかを常に考えてしまって、本当に伝えたい気持ちが伝えられなかったり、聞きたいことが聞けなかったり。
相手の一番でいたいと思うからこそ付きまとうもどかしい気持ち。
知った気になっていても、本当に相手を理解できているのか分からなくなる不安。
作中にはこんな共感してしまう部分が多く、私自身も色んな過去の恋愛を思い出しては後悔したり、懐かしく思ったりしました。
相手がどう思っているか見えないからこそ、恋愛は一生懸命になってしまうのだなと。
「もっと素直になれば良い。」
「思ったことを伝えないと損じゃないか。」
分かってはいても、そう簡単なものじゃないんです。
誰もが選択を間違えたくないから、とても慎重になるんだと思います。
それでも一歩を踏み出そうとする勇気が必要な場面もあります。
そんな勇気をもらえる一冊でもあるんじゃないかと思いました。
今、もどかしい気持ちを抱えている方には是非読んでみてほしい。
自分だけじゃないという安心感と、少しの勇気がもらえるかもしれません。
【 この街でわたしたちは (幻冬舎文庫) 】では各章のラストに、その章にちなんだ短歌があります。
この短歌がまた突き刺さる。
ぼんやりとあなたを見てた はっきりと見るより好きでいられるように
北区
相手の全てを知りたいと思う反面、知ることが怖いこの矛盾した感情を表した一節。
核心を突かれているような苦しい気持ちになりました。
でも否定できないこの感じ。
皆さんはどの章が一番突き刺さるでしょうか。
実在するお店
東京23区+武蔵野市でお酒やグルメやスイーツ。
各章(場所)での舞台は実際に実在する飲食店。
美味しい食事やお酒で、テーブルを囲みながら繰り広げらていく恋愛模様がとてもリアルでした。
食事の描写は割とあっさりとしていながらも、どの料理も美味しそうなものばかり。
実在するお店ということもあり、各章で店名が出てくる度に調べては、お店の雰囲気や食事を妄想してみる。
更にリアルなものになるその恋愛模様とグルメというカテゴリー。
とてもバランス良く展開されていて、恋愛要素をうまくスパイス付けしてくれているかのようでした。
本を片手にお店を巡ってみたり、実際に好きな人と行ってみるのもとても楽しそうです。
台東区の中華料理、江東区のアジアンカレー、板橋区のスイーツは個人的にも行ってみたいお店だったのでしっかりメモ!
本当はここに紹介されている店舗名も載せたいところなのですが、それは是非読んでみて知っていただきたいので、簡単に場所とどんな料理かだけ紹介させてください。
台東区上野「中華」
千代田区飯田橋「スペイン料理」
文京区本郷「ワインバー」
江東区東陽「アジアンカレー」
中央区銀座「おでん」
墨田区押上「寿司」
渋谷区神宮前「フレンチ」
港区南麻布「イタリアン」
目黒区青葉台「フレンチ」
世田谷区北沢「肉バル」
品川区北品川「フレンチ」
大田区羽田空港「うどん」
北区八王子「小料理」
荒川区東日暮里「カフェ」
足立区千住「ホルモン」
板橋区向原「ケーキ」
江戸川区西葛西「インド料理」
葛飾区新小岩「中華」
中野区中央「イタリアン」
杉並区荻窪「ビストロ」
新宿区歌舞伎町「四川料理」
豊島区池袋「イタリアン」
練馬区豊玉北「イタリアン」
武蔵野市…○○○
お住まいの近所はありましたでしょうか。
どのお店もかなりの高評価を得ている人気店ばかりでした。
是非【 この街でわたしたちは (幻冬舎文庫) 】で、ほろ苦い恋愛とともに美味しいグルメもお召し上がりください。