【 家族八景 / 筒井康隆 】

家族八景 筒井康隆 小説

 

直木賞候補作の名作

 

筒井康隆 著

家族八景

 

 

1972年に刊行された古い作品ですが、今この時代に読んでも面白いと思えるのは、人間の奥底に眠るものが変わらないもので、誰もが黒い部分を持っているからなのか。

ドラマ化や漫画化もされており、人気なのにも納得の作品でした。

ロケットや宇宙船といったSF作品をここ最近立て続けに読んでいたので、「超能力」を題材にしたSF作品は新鮮で面白かったです。

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家族八景 あらすじ

 

人の心を読み取る能力を持つ18歳の少女・七瀬。
彼女が垣間見た、仮面をかぶった家族たち。

幸か不幸か生まれながらのテレパシーをもって、目の前の人の心をすべて読みとってしまう可愛いお手伝いさんの七瀬――彼女は転々として移り住む八軒の住人の心にふと忍び寄ってマイホームの虚偽を抉り出す。

人間心理の深層に容赦なく光を当て、平凡な日常生活を営む小市民の猥雑な心の裏面を、コミカルな筆致で、ペーソスにまで昇華させた、恐ろしくも哀しい本である。

出典 : 家族八景

 

8つの訪問先

 

18歳の火田七瀬は人の心を読めてしまう精神感応能力者(テレパス)の女性である。

高校卒業後、住み込みのお手伝い(女中)となり様々な家庭を転々とする。

 

 

無風地帯

『尾形家』

尾形夫婦と大学生の娘と息子の4人家族。主人である久国がこっそり通うクラブで出会った女は…。

澱の呪縛

『神波家』

神波夫婦は履物屋を営んでおり、13人の大家族。

そこには普通では考えられないゾッとするような光景が待ち受けている。

青春讃歌

『河原家』

寿郎と陽子の夫婦二人家族。妻、陽子が抱える悩みに、その悩みを誤魔化し続ける秘密。女は青春から追放されていく。

水蜜桃

『桐生家』

桐生夫婦と、その息子・長男の竜一とその妻・彩子と息子の彰。そして高校三年生次男の忠二。主人である克己は一昨年定年退職をするが、家族からは邪魔者扱いされる日々。やがて克己は恐ろしい計画を思いつく。

紅蓮菩薩

『根岸家』

新三と妊娠中の妻の菊子。新三は私立大学で助教授をしている。そんな新三は何故か七瀬の「火田」という名字を知っていた。「火田」という名前に隠された過去の出来事とは。

芝生は緑

『高木家』

高木家に手伝いにきた七瀬であったが、突然隣に住む市川家にお手伝いに行くように指示される。互いに顔色を伺い合う、高木家と市川家。板挟みにされる七瀬。

日曜画家

『竹村家』

天州と登志の夫婦と、その息子の克己。天州はサラリーマンとして働く傍ら、週末には画家として絵を描いていた。家族には除け者にされている天州。そんな天州が気にかかり七瀬は天州に近づくが。

亡母渇仰

『清水家』

信太郎と幸江夫婦。数日前に信太郎の母・恒子が亡くなった。

一流の大学を卒業し、一流の企業に勤める信太郎。そんな信太郎は母親の死のショックから立ち直れず崩壊していく。

 

 

テレパス

 

主人公の火田七瀬は幼い頃から『テレパス』の能力を持っていた。

テレパスとは、相手の言動に関わらず、考えていることが読み取れる能力だそうです。

 

そんな能力を持つ七瀬が、一つも二つも問題を抱えている家庭に潜り込む訳です。

表向きでは普通に見える家族(割と表向きにも普通ではない人物が多いのですけどね…でもそこがまた面白いのですが)。

しかし七瀬にはそんな家族の心の内側が見えてしまう。

そこには目を瞑りたくなるようなゾッとする人間の恐ろしさや、ドロドロとした人間関係が隠れているのです。

嫉妬や欲が渦巻いていてとても怖い…はずなんですけど。

筒井さんの書き方なのでしょうか。

厭〜な気分になりきらず、どこか爽快でいてコミカルさもある。

めちゃくちゃ面白いです!

何だか人の内側を盗み見ているような、いけないことをしている感覚もあって気になって読み進めてしまう。

 

それだけでも面白いんですけど、後半で七瀬の過去にも触れている部分があって、そんな謎に満ちた『テレパス』の能力の秘密も気になってくる。

 

この【 家族八景 】ですが、更に【 七瀬ふたたび 】【 エディプスの恋人 】と続編があり三部作となっているそうです。

今作で明かされなかった謎の部分もあって、引き続き追いかけたいと思っております。

ドラマや漫画にもなっているとのことでそちらもいずれ!

 

 

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