シリコンバレー最大の伝説
と言われたシリコンバレーで最も影響力のあった男。
ビル・キャンベルについてを読み解くことができました。
ペンシルバニアで生まれ育ったビル・キャンベル。
75歳の時に癌で亡くなってしまい健在ではありませんが、彼の残した数多くの伝説は今も語り継がれています。
ビル・キャンベルとは…
・とても口が悪い
・フットボール命
・下ネタ好き
・野郎旅をきわめている
・ビールをこよなく愛していた
作中にはビル・キャンベルをこのように紹介する部分がありました。
では、果たしてこんな男がどうして伝説と呼ばれているのか。
シリコンバレーの巨人たちの裏にはビル・キャンベル
作品の表紙には様々な偉人の名前があります。
このスティーブ・ジョブスや、ラリー・ペイジらを指導した男こそがビル・キャンベルなのです。
スティーブ・ジョブスが潰れかけのAppleを立て直そうとした際に助けたのも!
ラリー・ペイジとセルゲイ・ブリン、エリック・シュミットがスタートアップだったGoogle(現アルファベット)を時価総額数千億ドルの企業にするのに手を貸したのも!
ビル・キャンベルという男でした。
タイトルの「1兆ドルコーチ」…1兆ドル!!と言うと大袈裟に聞こえますが、上記の活動だけをみても彼の働きは1兆ドルなんてものではありませんでした。
誰もが聞いたことのある偉人たちの、「共通の師」である男なのです。
元々、コロンビア大学アメリカンフットボール部のヘッドコーチを務めていたビル。
そんなアメフトのキャリアを、ビジネスの世界で振るうことになります。
全ての部下をわが子と思え
ビルは、「人がすべて」という原則のもとに、チームの構成をしていきます。
そして、ビルにとって「信頼」は常に最優先かつ最重要の価値観でした。
ビルは、自分がコーチするすべてのチームに「心理的安全性」「明瞭さ」「意味」「信頼関係」「影響力」を育むために、労を惜しみませんでした。
「球団の幹部が誠実で、組織の誰の言葉も信頼できるような環境があれば、選手は安心する。選手は安心すると、ここを離れたくなくなる。ここを離れたくなくなれば、チームに居続けるためにフィールドで全力を尽くそうとするだろう。」
ビルの「人間たらし」は常に「信頼」を勝ち取っていたと思います。
作中で紹介されていたビルの会議の進め方はとても興味深いものでした。
それは、会議を始めるにあたって、まずチーム一人一人に週末の休みはどんな過ごし方をしたのかを話させるというもの。
相手のすべてに興味を持っていることを伝えることで人間関係がしっかりとし、連帯感が生まれるという考え。
また声をかけることで、「自分は尊重されていて、目に見えない名もなき存在ではなく、チームワークの一端を担っている」とメンバーは感じることができる。
ビル風に言えば、むしろそう感じさせていないのはコーチや経営者の失態だと。
このようにビルは常に「チームファースト」を大事にしていました。
何か問題が起きても、問題に目を向けるのではなく、問題にまかされたチームのことを最初に考える。
チームをより良い状況にもっていくことで問題も解決するという強い信用も持っていたのです。
同じフィールドに立つチームのことを想い、常に気にかける。
チームの人間の家族や友人とも仲良くなることも多かったという、本当に情の厚い人間だったのです。
パワー・オブ・ラブ
表に出たがらないビルだったこともあり、彼の名前を知る人間はそう多くはないかもしれません。
しかし、彼が75歳で癌に倒れた時、彼の元には大勢の人が集まったといいます。
生前数多くの人間から愛され、愛したビル・キャンベル。
スティーブ・ジョブスからの信頼も厚く、2人で散歩に出かけるほどの仲の良い親友関係にありました。
スティーブ・ジョブスの追悼式ではビルがスティーブ・ジョブスとの思い出に浸っている部分が見れます。
とても楽しそうに話すビルもまた、スティーブ・ジョブスのことをとても尊敬していたのです。
(追悼式の演説はネットで検索するとすぐに観れると思います。)
チームメンバーを解雇しなければいけない!と言った場面でもビルの「チームファースト」が強く現れていました。
解雇は会社の失敗であって、解雇される側は悪くない。だから経営陣は、彼らに胸を張って辞めてもらわなくてはならない。辞めていく人たちを丁寧に、敬意をもって扱い、解雇手当をたっぷりとはずみ、彼らの功績を称える社内メモをまわすんだ。
これが会社に残るチームの士気と精神安定を保つことにも繋がるというのです。
ちょっと説明しただけでも、ビル・キャンベルがどんだけすごい人間だったかが分かってもらえると思います。
私自身もマネジメント業に就いていたことがあります。
仕事をする上で、従業員のメリットを考えるということは、常に課題でした。
この【 1兆ドルコーチ――シリコンバレーのレジェンド ビル・キャンベルの成功の教え 】を読んだ上でビルのように仕事をすることが出来るか、と問われると恐ろしく自信がありません…
チームメンバーの士気を同じレベルまで持っていくことがどれだけ大変なことか。
そして常に一人一人を想い続けることが本当に可能なことなのか。
そう考えると、やはりビル・キャンベルがどんなにすごい人間だったかを思い知らされます。
ビルがいない今も、彼にコーチングしてもらったことのある人間は「ビルならどうするか」という考えを持っているそうです。
ビル・キャンベルの思想は今も生き続けていて、今後も語り継がれていくことでしょう。
かなり厚みのある作品ですが、とても読みやすく面白い作品でした。
少しでも興味を持った方には是非目を通していただきたい、おすすめの一冊となりました。