圧倒的スケールで描かれる歴史アート小説
日本が誇る名画『風神雷神図屏風』と絵師『俵屋宗達』
出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/風神雷神図
「風神雷神図屏風」で知られている天才絵師「俵屋宗達」。
そんな日本の天才少年絵師が海を越えて、イタリア・ルネサンスを体験する。
長い道のりと、深い絆で結ばれた仲間との壮大な冒険。
謎多き琳派の祖『俵屋宗達』とバロックの巨匠『カラヴァッジョ』の出会い。
それは雷神(ユピテル)と風神(アイオロス)が結んだ縁。
西と東が、天の国と地の都が、ここで一つとなり、強い誓いが生まれる。
史実をもとに描かれたアートフィクション
どこまでが史実なのか分からなくなるほどのリアルな内容。
絵を仕上げていく細かい一つ一つの動作。
旅の途中でのトラブル。仲間とのやり取り。
親や師との辛い別れや、身が奮い立つような出会い。
どれも真実なのではないかと疑いたくなるような、史実をもとにしたフィクション。
史実上では俵屋宗達はとても謎の多い人物だそうです。
実際には海を渡ったのは天正遣欧少年たちのみでしたが、絵師である俵屋宗達に使命を与え、同行させるという原田マハさんのうますぎる物語にワクワクしました。
様々な歴史上の人物が繋がってゆく
戦国時代の天下人、織田信長。
日本美術史で最も著名な画人と名高い狩野永徳。
天正遣欧少年使節のローマに派遣された4人の少年(伊藤マンション、千々石ミゲル、中浦ジュリアン、原マルティノ)。
天正遣欧少年使節派遣を計画・実施をしたカトリッック教会の司祭、アレッサンドロ・ヴァリニャーノ。
芸術・学芸のパトロン、ロレンツォ・デ・メディチ。
「モナリザ」や「最後の晩餐」で有名なレオナルド・ダ・ヴィンチ。
ルネサンス期の偉大な彫刻家、ミケランジェロ・ブオナローティ。
バロック絵画の形成に大きな影響を与えた、ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジオ。
実際に存在した偉人たちが一つの作品で繋がってゆく。
有名なアートの数々
作中には誰もが一度は目にしたことがあるような有名な作品がいたるところで登場しています。
出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/洛中洛外図
出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/最後の審判_(ミケランジェロ)
出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/最後の晩餐_(レオナルド)
作中では、織田信長より命を受けて、「洛中洛外図」の製作に俵屋宗達も関わることとなります。
最初はおぼれてもがくかのように見えた宗達の筆は、瞬く間に色とりどり鱗を持つ魚となった。
俵屋宗達が無我夢中で筆を滑らして作品を描いていく描写が、またとても美しい。
旅先では、ミケランジェロや、レオナルド・ダ・ヴィンチの作品と出会う宗達。
絵とは、ただ、目に見えるものを描き写すものではない。と絵への情熱を燃やしていきます。
若き四人の仲間たち
どこまでが史実か分からなくなる、リアルなストーリー。
有名な歴史上の人物と作品の登場。
常に興奮が収まることのない展開が続きますが、もう一点見応えのある部分がありました。
それが、俵屋宗達と共に海を渡った天正遣欧少年使節4人の仲間との冒険部分です。
10代の若き少年たちの若さゆえの葛藤や、徐々に絆が深まっていく中で見えてくる友情関係。
長い歳月を要する旅で深まる絆は、時に助け合い、時に励まし合い、時に仲間のために涙を流し…
実際には出会うことすら無かったかもしれない天正遣欧少年使節の4人と俵屋宗達。
そんな5人の熱い物語が見れるのは、原田マハさんが俵屋宗達と同じ時代に生きたこの少年たちに興味をもってこそ。
史実上では、織田信長の死後、キリシタンが迫害されるというとても残酷な時代が、帰路に着く少年たちを待っていることになります。
しかし、どうか物語の中だけでも彼らの長い旅が報われる時代であってほしいと強く願います。
バロックの巨匠『カラヴァッジョ』
この作品の目玉とも言えるのが本の帯にもある「俵屋宗達×カラヴァッジョ」という西と東の二人の絵師の繋がりです。
さすがに帯にこの堂々としたキャッチコピーがあるので多少先が読めてしまった部分があったのですが…
それでもやはりカラヴァッジョの登場シーンに興奮しました。
ネタバレになってしまうのでここでは詳しい内容は控えておきますが、この二人がどう出会うのか、どんな結びつきがあるのか。
是非【 風神雷神 Juppiter,Aeolus(上) 】【 風神雷神 Juppiter,Aeolus(下) 】を読んで感動のシーンを目にしみてください。
風神雷神が結ぶ縁がそこにありました。