第13回日本ホラー小説大賞長編賞 受賞!
猟奇的な世界
矢部嵩 著
【 紗央里ちゃんの家 】
大学在学中の2006年に、こちらの【 紗央里ちゃんの家 】で、第13回日本ホラー小説大賞長編賞を受賞してデビュー。
学生時代に執筆した作品でデビューを果たし、そのデビュー作が大賞を受賞ってすごいですね。
漫画家の福満しげゆきさんが描いている文庫版の表紙が怖い。
手前の女性、掲げた手が血に染まっていて、左手には血に濡れて隠された包丁。
そんな女性に招かれた男の子の顔にも血の跡が…。
もちろん物語の一コマなのですが、想像するだけで恐ろしいですよね。
そんな期待は裏切られることなくしっかりと怖かったです!
紗央里ちゃんの家 あらすじ
叔母からの突然の電話で、祖母が風邪をこじらせて死んだと知らされた。
小学五年生の僕と父親を家に招き入れた叔母の腕もエプロンも真っ赤に染まり、変な臭いが充満していて、叔母夫婦に対する疑念は高まるけれど、急にいなくなったという従姉の紗央里ちゃんのことも、何を訊いてもはぐらかされるばかり。
洗面所の床から、ひからびた指の欠片を見つけた僕は、こっそり捜索をはじめるが…。
第13回日本ホラー小説大賞長編賞受賞作。
出典 : 紗央里ちゃんの家
気持ちが悪い(物語的に良い意味で)
夏休みに、従姉の家に遊びにのが毎年の恒例な主人公の僕。
今年は、僕の姉が受験を控えているため姉と母は留守番。
従姉の家へは、父と僕との二人で遊びに行くことになった。
しかしそこには従姉である紗央里ちゃんがいない。
そして、遊びに行く前に知らされた祖母の死。
今年の夏はちょっと違っていた。
冒頭から不思議なオーラを醸し出しているこの作品。
まともな登場人物はいたかしら…。
久しぶりに出迎えてくれた叔母は玄関先で血だらけ!
(表紙の絵がこのシーン)
料理中で、それは魚の血だよ。なんて話をはぐらかされてお邪魔する僕と父。
もうここで既におかしいじゃん!
叔母はもちろんだけど、異変を感じない父も怖いよ!
主人公の僕だけ少し違和感をおぼえるんですけど、そんな僕は怖いもの知らず?
あらすじにもあるように、洗面所で誰のものかも分からない指を見つけちゃうんですよ。
亡くなった祖母の指?それともいなくなってしまった紗央里ちゃんの指?それとも…?
祖母の死について。紗央里ちゃんがいない謎。叔母の血まみれの姿…。
真相を解明すべく勝手に親戚の家を捜索しちゃいます。
唯一まともだと思っていた僕もなんかおかしい。
みんなおかしい。
話の内容もとても不気味ですが、作品の構成や文体も怖すぎる。
なんかここだけ他と描かれ方が違う。
作者までおかしくなったの?
って、それも演出なのですけど、それが物語を更に歪ませていく。
意味がわからなすぎて怖い。
不気味な狂気の世界。
気持ち悪かったな。特に僕が慌てて○○を○○しちゃうシーン。
もう想像してこっちまで吐き気が!
しかし、謎の中毒性がありました。
ちょっとブラックユーモアもあり、私は何を読んでいるんだろう。とこちらまでおかしくなりつつも、読む手が止まらずでした。
是非【 紗央里ちゃんの家 】を読んで、僕と一緒に二人の行方不明者を探し出してください。