第2回日本ホラー小説大賞短編賞 受賞!
生と死の境に疑問を投げつける衝撃のデビュー作
小林泰三 著
【 玩具修理者 】
こちらがデビュー作なのですね。
【 アリス殺し 】の作家さんと言うイメージも強く、勝手にミステリ作家さんだと思っていたのですが、ホラーにSF!
今作の内容もとても面白く、もっと早くに読んでおけば良かったと後悔しました。
残念なことに、小林泰三さんは、2020年11月23日に作家人生に幕を下ろすこととなってしまいましたが、沢山の作家から愛されていた素敵なお人柄だったとのこと。
有名作家からの数々の追悼の言葉は、どれも愛が溢れていました。
『玩具修理者』 『酔歩する男』 あらすじ
この【 玩具修理者 】ですが、表題作である『玩具修理者』という短編と、『酔歩する男』という短めの長編の2作品が収録されています。
どちらも摩訶不思議な、時にゾッとしてしまう、世にも奇妙な物語でした。
玩具修理者 あらすじ
玩具修理者は何でも直してくれる。
独楽でも、凧でも、ラジコンカーでも……死んだ猫だって。
壊れたものを一旦すべてバラバラにして、一瞬の掛け声とともに。
ある日、私は弟を過って死なせてしまう。
親に知られぬうちにどうにかしなければ。
私は弟を玩具修理者の所へ持って行く……。
現実なのか妄想なのか。
生きているのか死んでいるのか――。
出典 : 玩具修理者
酔歩する男 あらすじ
仲間と飲み会をして盛り上がり皆が帰った後の余韻に浸っていた私は、不意に見知らぬ男から「私を覚えておいでではありませんか?」と声をかけられる。
しかし、その男は私の記憶には存在しない男だった。
まったく知らない男は、私しか知らないはずの秘密を話し始めた。
男と私との記憶の食い違いの原因。
そこには、時の流れを忘れてしまうほどに聞き入ってしまう、奇妙なものが待っていた。
奇妙な世界
『玩具修理者』の方は冒頭から怖かったですね。
そして、すごーくグロ!!
不意な事故で弟を死なせてしまった主人公。
両親にバレないように玩具修理者の元にその死体を持っていきます。
弟の死体を長時間持ち運ぶ姉…。
ここの描写がまた細かくて怖すぎる!
なんでも直してくれる玩具修理者。
短いお話でしたが、その恐ろしい世界観に息を呑みました。
そして『酔歩する男』。
個人的にはこちらの方が好みでした!
『玩具修理者』が「生と死」ならば、こちらの『酔歩する男』は「時間」ですかね。
こちらはグロはないものの、先が読めない奇妙さがあって面白かったです。
急に面識のない男に、「私を覚えておいでではありませんか?」と声をかけられるところから始まります。
変な男が現れたな…と思っていたら不思議な展開へ!
物語を読み進めていくうちに、冒頭で少し疑問に思った部分にも伏線があったりと、じわじわと伏線回収が。
『玩具修理者』とはまた違う、異質なホラー作品でした。
ページ数も多くはない作品ということもありますが、面白すぎて一気読みでした!
他とは一味違う奇妙なホラー作品。楽しんでみてください!