臨床心理学者「河合隼雄」先生による読む薬
人のこころなどわかるはずがない
誰もがなんとなくは分かっていながらも、言葉にするのは難しい。
そんな「常識」をまとめてくれたエッセイ。
臨床心理学と聞くととても難しいイメージでしたが、驚くほど分かりやすくまとまっているのも魅力の一つでした。
日常で取り巻く人間関係を客観的に見つめ直すことができて肩の力が抜ける。
そんなタイトル通りのこころのお薬。
様々な物事に焦点を当てた「55」の項目
目次を見ると55個にも及ぶ項目が記載されています。
2. ふたつよいことさてないものよ
5. 「理解ある親」をもつ子はたまらない
11. 己を殺して他人を殺す
12. 100点以外はダメなときがある
13. マジメも休み休み言え
17. うそからまことが出てくる
20. 人間理解は命がけの仕事である
24. 健康病が心身をむしばむ
26. 「耐える」だけが精神力ではない
30. 同じ「運命」でも演奏次第で値段が違う
32. うそは常備薬 真実は劇薬
35. 強い者だけが感謝することができる
39. 「昔はよかった」とは進歩についてゆけぬ人の言葉である
40. 道草によってこそ「道」の味がわかる
44. 物が豊かになると子育てが難しくなる
47. 二つの目で見ると奥行きがわかる
50. のぼせが終わるところに関係がはじまる
53. 「知る」ことによって二次災害を避ける
上記は特に印象深かった私個人のお気に入り項目です。
このように、様々な環境や対人関係別に一章一章まとめられている。
この目次を眺めるだけでも面白く、気になる部分をサッと読めるのもありがたい。
本によって気になる部分にマーカーを引いたり、付箋を貼ったりすることがあります。
とても心に響く内容が多く、【こころの処方箋】は常に手元に置いておいて読み返せるようにと、マーカーと付箋を使用。
しかし…
共感部分や日常の対策として活用したい部分がとても多く、付箋がすごいことになってしまいました。
お気に入りに挙げた項目も本当だったら全てを記載したいぐらいです。
身に覚えのあるこんな日常
沢山のわかりやすい例を元に解説してくれています。
そこには「非行少年と決めつけられた子供と大人」「会社という組織内の人間関係」「理想の夫婦」「生徒たちと同等の立場にいたい教師」「一心同体であった友人の裏切り」など、他にも沢山の人間関係。
誰もが自分の境遇や経験に照らし合わせて、身に覚えを感じるものもがあるのではないでしょうか。
例えば、一度は言われたことがありませんか?
もしくは言ったことはありませんか?
「だから今の若者は」「昔はよかった」
これってやっぱり、今のこの状況と過去を比べて、今のこの状況を非難してしていると受け取りますよね。
もちろん言われた側も嬉しい言葉ではないはずです。
そこで河合隼雄先生はその言葉を発せられる根本に焦点をおき、原因を導き出しています。
「今この状況」や「若者の生き方」についてゆけない自分の不甲斐なさを認めることができずに言いたくなるのではないか。
なんだかそう示されると、肩の力が抜けて楽になったり、図星すぎてドキりとしませんか。
このような感じで、普段自分が身をおいている環境下で活用できる対策や見方の変化方法が盛り沢山なのです。
職場や学校で「今の若者は」と言われる若者世代のみなさん。
言葉の受け取り方が変わって、相手の境遇にも考えを巡らせる余裕が生まれませんか?
友人や同期との会話で「昔はよかった」が話題によく出てくるみなさん。
今の環境へも立ち向かっていかないと!というやる気が出てきませんか。
この本に巡り合えたことへの感謝
一度全てに目を通した今。
今後は日常生活で起こる人間関係のトラブルに突き当たる度に開いていきたい本です。
普段あまり手にしないカテゴリの本でした。
この本を読むきっかけになったのは、オンライン読書会でのテーマにあったからなのです。
この場を借りて、素敵な出会いのきっかけをくださった読書会企画者さまに感謝します。
本を勧めたり、紹介するって改めて素敵なことだなーと思いました。
私の思考に新たな武器が増えた。そんな一冊になりました。
ありがたいことに、Twitter上でも様々な本を紹介していただく機会があります。
沢山の本との出会いに感謝して、沢山の武器となる知識を今後も蓄えていきたい。
そんな温かい「感謝の気持ち」
感謝できることへの喜びこそ強い人間への第一歩。
【こころの処方箋】
35. 強い者だけが感謝することができる
からの学び