第32回日本推理作家協会賞 受賞!
週刊文春ミステリーベスト10の20世紀国内部門第一位!
20世紀傑作ミステリ第一位
天藤真 著
【 大誘拐 】
戦後に千葉県で開拓農民となり、大学講師も勤めていたという。
その傍ら、推理小説を書き始めた昭和の推理作家。
1991年には【 大誘拐 RAINBOW KIDS 】として映画化もされています。
小説、映画ともに人気の作品。
その後、韓国でも映画化されていたり、2018年には東海テレビ開局60周年記念としてドラマにもなりました。
何年経っても色褪せず、愛され続ける大傑作。
大誘拐 あらすじ
刑務所の雑居房で知り合った戸並健次、秋葉正義、三宅平太の三人は、出所するや営利誘の下調べにかかる。
狙うは紀州随一の大富豪、柳川家の当主とし子刀自。
身代金も桁違い、破格ずくめの斬新な展開が無上の爽快感を呼ぶ、捧腹絶倒の大誘劇。
出典 : 大誘拐
キリよく百億。ビタ一文負からんで!
大阪刑務所にて3度目の服役となったスリ師の戸並健次。
スリ師から足を洗うためには資金が必要!ということで、最後の大勝負を計画する。
その計画とは、和歌山県の「山林王」である老婦人の柳川とし子を誘拐するというものであった。
この柳川とし子。
82歳の小柄なおばあちゃま。
…しかし、大富豪である大柳川家の当主!
肝が据わっているんです。
誘拐犯の脅迫にもびくともせず。
むしろ説き伏せてしまう勢い!
とにかく、一筋縄ではいかないスーパーおばあちゃま。
誘拐犯たちが掲げた五千万という身代金に「私はそんなに安うないわ!」と怒り奮闘。
末代までの恥さらしにはなれない。と百億のいう驚くべき金額を自ら提示してしまいます。
百億…あまりにも異次元すぎてどんだけの金額なのかがしっくりこない。
何やら軍用機が1〜2台手に入る金額だそうですよ。
もうこのとし子刀自が魅力的すぎる!
読み進めながら誘拐犯たちとともに、心が浄化されていくような感覚まで…。
刀自が、太陽は西から昇って東に沈むと言えば、それすらも信じてしまいそう。
獅子の風格と、狐の抜け目なさと、奇妙なことだがそれにパンダのような親しさと、兼ね備えた人格
作中ではこんな表現をされていましたね。
そんなスーパーおばあちゃまなとし子刀自。
百億という誰もが驚愕する身代金を自ら提示してしまうだけではおさまらず。
作戦を遂行していく上で犯人にアドバイスをしたりと手助けまでしてしまう。
何故とし子刀自は犯人に手助けなんてしてしまうのか。
そんな真相が徐々に明らかになっていき、とし子刀自の思いに…クッ。
全世界を揺るがす大誘拐事件!
スケールもデカくてハラハラドキドキさせられますが、ユーモアに富んだ登場人物たちやその会話のやりとりがずーっと面白い。
とし子刀自はもちろんですが、出てくる登場人物が皆いい味を出している。
82歳のおばあちゃまを誘拐してしまうような誘拐犯にも物語があります。
どうしてとし子刀自を狙うことになったのかという部分も見所の一つです。
そしてなんと言っても、身代金百億円は要求されることになるのか。
身代金を手に入れるために立てられた計画とはどんなものか。
なるほど、これが20世紀国内ミステリの大傑作と言われる作品なのですね。
大誘拐 RAINBOW KIDS
1991年に、岡本喜八さん監督の元で【 大誘拐 RAINBOW KIDS 】として映画化されたこの作品。
原作を読んだ後に映画の方も鑑賞。
AmazonプライムにもU-NEXTにも見放題にありました(2023.410現在)。
私も教えていただいて楽しみにしていたのですが、とし子刀自役がとなりのトトロのおばあちゃんの声優をしていた北林谷栄さんなんですよね。
トトロのおばあちゃんを思い出させるセリフや声を聞くと、ちょっとテンションが上がっちゃいました。
誘拐犯のリーダー格健次役は若き日の風間トオルさん。
小麦肌の風間さんがカッコ良かったです!
そして、誘拐事件の捜査の指揮を取っていた井狩大五郎という県警本部部長役を緒方拳さん。
過去に、とし子刀自のお手伝いさんをしていた中村くら(くーちゃん)役の樹木希林さんも素敵でした。
映像で見る札束の山にも圧倒されました。
小説の方は誘拐犯である3人組ととし子刀自を軸に話が進んでいく感じがありましたが、映画の方はとし子刀自VS警察(井狩大五郎)が強かった気がします。
ラストで明かされるとし子刀自の思いが、全面的に出てくるこの見せ方が、これはこれで良かったなと個人的には思ったり。
後味がいい。
心が洗われた、洗浄された気分。
韓国映画の方はかなりコメディよりだそうですが面白いと聞くので、そちらもいずれ観てみたいと思っています。
読んで良かった。観て良かった。
おすすめしていただいたことに感謝しながら、また再読しようと思います。
名刺代りの10選入れるかな。