【 儚い羊たちの祝宴 / 米澤穂信 】

儚い羊たちの祝宴 米澤穂信 小説

邪悪な5つの事件

 

身内に不幸がありまして

村里夕日むらさと ゆうひ上紅丹かみくたん地方を牛耳る大名家である丹山家の使用人として雇われた。

そこで丹山家の娘、丹山吹子ふきこと出会う。

夕日は吹子と過ごす時間に幸せを感じていた。

そんな時、丹山家で恐ろしい事件が起きる。

そこには、まさかの真相。

そしてその引き金になったものとは。

 

北の館の罪人

母を亡くした内名あまりは母からの遺言を元に、六綱家にやってきた。

六綱家の北にある館には秘密がある。

そんな北の館で六綱家の長男である六綱早太郎の世話をすることになる。

早太郎が北の館で過ごしているのは何故か。

そしてその結末は。

 

山荘秘聞

この世の天国とも思われる八垣内。そこに飛鶏館ひけいかんという別荘があった。

この館で使用人として働くことになった屋島守子やしま もりこ

ある日、崖から転落した越智靖巳おち やすみを助ける。

仲間を救助するためにやってきた山岳部の世話をすることに。

そこには奇妙で恐ろしい謎が眠っていた。

 

玉野五十鈴の誉れ

小栗家の一人娘、小栗純香すみか

15になった日にお祖母様の命により玉野五十鈴たまの いすずという同じ歳の少女が純香につくことになった。

お祖母様を説得して大学へ行き、そこで「バベルの会」に入会。

充実した日を送っていたのも束の間、小栗家で事件が起きる。

小栗家に戻ってきた純香に突きつけられた恐ろしい現実。

小栗家の行方は。

 

儚い羊たちの晩餐

ある日女は、サンルームで一冊の古い日記を見つける。

開いた最初のページには「バベルの会はこうして消滅した」とある。

分厚い日記には、「バベルの会」から除名された大寺鞠絵おおでら まりえによってその真相と結末が記されていた。

「バベルの会」とは。

そこに集まる人々の特徴とは。

そしてどんな結末を迎えたのか。

 

 

「バベルの会」をめぐる邪悪な5つの事件。

闇と幻想で彷徨う儚い人々。

ゾクゾクと身震いしてしまうような、恐ろしい短編集。

 

バベルの会

 

大学の読書会である「バベルの会」。

この「バベルの会」が5つの物語に少しずつ関わっています。

錚々たる名士の子女が名を連ねる「バベルの会」。

時に憧れを持たれ、時に事件の紐解きになり、時に恐ろしい道を歩む。

全てを繋ぐ「バベルの会」の謎。

そしてそれは受け継がれていくのです。

 

中には真相がはっきりと書かれていない作品もあります。

ですが、考えるのもおぞましくなるような、そんな真相が浮かばずにはいられない。

人間の黒い歪みを見て、終始恐怖から逃れることができませんでした。

 

桁違いの恐怖

 

 

どの作品も驚くほど怖いです。

ですが、中でも「身内に不幸がありまして」「玉野五十鈴の誉れ」は残酷でいてエグい…。

いや。

それを通り越してもうどう表現したら良いのか。

個人的に同じ人間として恐ろしく、心臓をバクバクさせながら読んだのが「山荘秘聞」でした。

人の願望や欲は、こうも奇妙で狂気な方向へと向かってしまうのか。

もうこれはサイコパスなレベル

どれも生々しい描写があり、これ以上先を知るのが怖くなる。

なのに読む手が止まらず。

 

中にはちょっと顔の筋肉が緩むような優しい気持ちになる場面もあるのですが。

油断してはいけません。

確実に堕とされます。

最終話で出てきたあやちゃんだけが唯一輝いて見えましたね。

 

 

梅雨入りして更にこれから暑くなる季節。

是非【 儚い羊たちの祝宴 (新潮文庫) 】で身の毛もよだつような恐怖体験をしてみてはいかがでしょうか。

 

 

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