第152回 直木賞受賞作品!!
2015年 本屋大賞2位!!
僕のすべて
小学生である圷歩は、イランにて、左足から誕生する。
その後も幼少時代をイランで過ごす歩。
イラン革命により帰国し、大阪に住むことになるが、変わり者である姉貴子のせいで、自分の本心を常に隠して生きていくことになる。
その後、父の転勤によりエジプト・カイロにて2度目の海外生活。
少年ヤコブとの運命の出会い。
親友との別れ、家族の崩壊、破天荒な姉に振り回される日々。
成長と共に歩自身も崩壊していく。
導かれるように、歩はあの場所へと帰っていく。
大切な言葉『サラバ!』と共に。
歩む
破天荒は姉、自由人の母、空気のような父。
傍から見ると、奇想天外な家族。
学校でいじめに合う姉の影響もあり、歩は身を潜めること、存在を消すことを覚える。
幼少時代は、歩だけまともに見えていた家族でしたが、とうとう歩も狂い始めることになります。
容姿も悪くなく、普通の生活を送ってきた歩。
年齢と共に薄くなる毛。うまくいかない仕事。友人の裏切り。
ここで少しずつ歩は、自分の名前が自分とは正反対のものだと気付き始めます。
上手く生きてきたはずだった歩。
落ちて、落ちて、堕落して行くその姿が、なんだか他人事ではなくなっていきました。
人間って、ここぞという場面で不器用になったりするものだと思う。
これでいいんだ!と自分に言い聞かせたり、周りと比べて確かめてみたくなったり。
中盤のダメダメな歩に手を差し伸べたくなる。応援したくなる。
ここから歩はダメダメでありながら、それでも足掻いていきます。
歩の人生を狂わした張本人である姉の貴子の救いの手のお陰で…!?
サラバ!
タイトルである『サラバ!』。
「さようなら」「バイバイ」
この作品では、そんな意味では無いんです。
挨拶では無い。何かを確かめ合うような、魔法の言葉。
この『サラバ!』、作品の途中に出てくる言葉なのですが、本当の意味は最後まで読まないと分かりません。
意味?というか、伝わってくるものがあるはず。
過去の自分「サラバ!」、ありがとう「サラバ!」、信じるもの「サラバ!」
単行本でも上・下巻、文庫本では上・中・下巻と、とても長い作品ですが、この長いストーリーのすべてがラストの『サラバ!』に込められています。
西加奈子なんなん!?
尊敬の意を込めての言葉です。
この作品を読んだらきっと思うはず。西加奈子なんなんだ!!!って。
西加奈子さんの作品どれも好きですが、「サラバ!」は衝撃的でした。
「さくら」を初めて読んだ時に、本でこうも感情が揺すぶられるという感覚に驚き、読書というものが好きになりました。
本を読んで、号泣というのはあまり無い私ですが、ラストの「サラバ!」の文字を見つけた時にはボロボロでした。
そして読了後の余韻がすごい!!
感動はもちろんですが、なんてすごい作品なんだろう…。こんな作品を読み切った達成感なんかもあり、放心状態でした。
西加奈子さんでおすすめの本は?と聞かれたら「さくら」をおすすめしています。
ですが本当は、本当は!
すごーく『サラバ!』を読んで欲しいのです。
ただ、とても長い作品なので躊躇してしまいます。
でも!絶対に読んで損はさせない作品だと思っています。
2020年1月に下巻を読み終わりました。
実は上巻を読み始めたのはかなり昔。
というのも「サラバ!」の前半は幼少時代の海外生活が描かれているのですが、とてもゆっくりと話が進みます。
実際にイラン・テヘラン生まれで、エジプト・カイロ、大阪育ちの西加奈子さん。
歩と同じ場所で生まれ、生活していたため、この海外生活の描写もとてもリアルです。
ですがテンポに乗れず、一度読む手を止めてしまいました。
時間を経て、再度読み直した時に後悔したんですけどね。
後半の展開はもう目が離せなかったです。
なんでもっと早くに読まなかったのか。
同じ感覚に陥る人はいるのだろうか?
そんな人には言いたい!
お願いだから最後まで読んでくれ!!
私は私でしかない。自分で信じるもは自分で見つけるもの。
あなたの信じるものはなんですか?
で魔法の言葉『サラバ!』について…「サトラコヲモンサマ」について読み解いてみてください。