あなたを救ってくれる言葉が、この世界にありますように。
西加奈子
8つの世界と悩み
燃やす
けいちゃんはいつも男の子のような格好をしていた。
スカートを履いてみるけど後悔することに…。
小学校の焼却炉のおじさんと出会うことで、本当の自分の思いを知る。
いちご
いちごをビニールハウスで育てている祖父の浮ちゃん。
いちごのことになると周りが見えなくなる浮ちゃん。
いちごの敵は浮ちゃんの敵。
孫孫
一人っ子のすみれの家に1ヶ月だけおじいちゃんが住むことになった。
慣れないおじいちゃんとの生活に居心地の悪さを感じるすみれ。
しかし、おじいちゃんと一緒に孫を演じることに。
あねご
あねごは17歳の時からお酒ばかり飲むようになった。
いつも気付くと周りから「あねご」と呼ばれる。
友人の勧めでキャバクラで働き出すあねご。
お酒ばかり飲む弱い自分を目の当たりにする。
オーロラ
ダンサーのトーラとコスメティックブランドのPRをしているケイ。
あるパーティーで出会った2人はアラスカに行くことに。
2人に生まれる温度差、距離…。
マタニティ
ある日友人の紹介で亮平と出会った。
猫好きな彼と交際することになる。
検査薬に現れたうっすらとした青い線。
どこかで願っていたはずなのに、要らぬことばかり考えてしまう。
ドブロブニク
ゆきが父親と観た初めての映画は「地獄の黙示録」だった。
映画が好きになるゆき。
大学では演劇サークルに入ることに。
自分の居場所を見つけるも…。
ドラゴン・スープレックス
アフリカ系ハーフの樹絵瑠(ジュエル)はひいおばあちゃんに育てられた。
ひいおばあちゃんはいつもおまじないをかけてくれた。
自分の娘や、孫のことを良く思っていないひいおばあちゃん。
ある日、そんなひいおばあちゃんが台所で倒れていた。
物語には一つ一つに西加奈子さんがその物語にちなんだ絵を描いています。
表紙の絵は「ドラゴン・スープレックス」の絵なのですが、西加奈子さん好きならご存知の力強いタッチのクレヨンで描かれた絵も必見です。
他の7作品の絵もとても素敵な絵ばかりなのでチェックしてみてください。
魔法の言葉
8つの世界(物語)の登場人物は、それぞれ悩みを抱えています。
環境も年齢も異なる人々。
悩みも異なり、客観的に見える部分もあれば、自分と重なって見える部分もありました。
今、苦しい思いをしていたり、生きづらさを感じている人に読んでいただきたい一冊です。
登場人物の考えや、力の抜きどころに心救われる。
背中をそっと押してくれる、魔法のひとことがあります。
個人的には「孫孫」「あねご」「ドラゴン・スープレックス」がとても印象的で好きでした。
「孫孫」では、与えられた役を演じることでその場をしのぐ。
決まった人にだけ悪態をつこう!という何だか生きる上での秘訣を教わったり。
「あねご」では、自分の弱い部分を包み隠して生きている登場人物に共感したり。
「ドラゴン・スープレックス」では、心に響く言葉が沢山ありました。
まじないや縁起なんてな、自分で決めるもんやねん。だってな、自分が幸せになるためのもんやろ?それに囚われるのはおかしいやんか。
特にこの言葉は響きました。
帯には物語の中の「魔法の言葉」がありました。
読み進めることで、この言葉にどんな魔法がかけられているか、知っていただけると思います。
好きな作家
好きな作家は?と聞かれたら迷わず「西加奈子さん」と答えるほど西加奈子好きです。
人間臭さというか、「人」の感情や心の叫びを言葉にするとこうなるんだなといつも引き込まれます。
西加奈子さんの作品は、話の流れるテンポというかリズム?が心地よいのです。
今回の【 おまじない (単行本) 】も全部好き!と言いたいくらいに一つ一つの言葉が刺さりました。
長編作品の印象が強い作家さんですが、短編集やエッセイ集もとてもおすすめです。
作中の主人公は皆「女性」なのですが、「弱い人」へ宛てた物語であり男性も共感できる部分があるんじゃないかと思います。
また、この登場人物の女性たちに優しい言葉をかけてくれるヒーローはみんなおっさんなんですよ。
西加奈子さん曰く、「おっさん」というと怪訝されるかもしれないけど、そんなおっさんが助けたっていいじゃないか。と。
この西加奈子さんらしい感じ。出てくるヒーローなおっさんたちがみんな個性溢れる素晴らしいおっさんなんです。
「いちご」に出てくる浮ちゃん。
「孫孫」に出てくるおじいちゃん。
「ドラゴン・スープレックス」に出てくるおっさん。
みんな大好きになるはずです。
そんなカッコ良いおっさんたちにも注目です!
是非【 おまじない (単行本) 】のイケてるおっさんの言葉に心奪われてみてください。