多彩な顔をもつ作家
ジャック・ロンドン 著
【 白い牙 】
冒険家、旅行家としてもしられている、多彩な顔をもつアメリカの作家。
日本でも、映画化やアニメ化されている作品も多く、幼い頃にこのジャック・ロンドンの作品を観ていたという方も多いかもしれません。
ちなみにこの【 白い牙 】は、【 白い牙 ホワイトフォング物語 】として1982年にテレビアニメ化されています。
キャラクターデザインは、ガンダム作品でも有名な安彦良和さんが手がけているため、とても馴染みのある絵に懐かしさを覚える人もいるのでは。
村上春樹さんもジャック・ロンドンのファンということで、作品の中やインタビューなどでジャック・ロンドンの作品を取り上げていましたね。
ジャック・ロンドンの波瀾万丈の生涯に比べれば、僕の人生なんて樫の木のてっぺんのほらで胡桃を枕にうとうとと春をまっているリスみたいに平穏そのものに見えた
出典 : ダンス・ダンス・ダンス
村上春樹さんは、ジャック・ロンドンと誕生日が同じということもあり、【 白い牙 】のオオカミがデザインされたワインで2人分のお祝いをしたことがあるとか。
複数の作品の中でも、特に愛読書としているのが【馬に乗った水夫 】というジャック・ロンドンの伝記だそうです。
現在は品切れになっているため、手に入りにくい作品かもしれませんが、村上春樹ファンのかたは見つけたら手に取ってみてはいかがでしょうか。
白い牙 あらすじ
自分以外のすべてに、彼は激しく牙をむいた。
強さ、狡猾さ、無情さ……彼は生き延びるため、本能の声に従い、野性の血を研ぎ澄ましてゆく。
自分の奥底にいまはまだ眠る四分の一のイヌの血に気づかぬままに――ホワイト・ファング(白い牙)と呼ばれた一頭の孤独な灰色オオカミの数奇な生涯を、ゴールドラッシュ時代の北の原野を舞台に感動的に描きあげた、動物文学の世界的傑作。
出典 : 白い牙
ホワイト・ファング(白い牙)
1/4イヌの血を引いているオオカミ。
白い牙を持つ子オオカミは「ホワイト・ファング」と呼ばれた。
そんなホワイト・ファングは、自分を待ち受ける過酷な環境や、人間の支配下でさまざまなことを学んでいきます。
オオカミの野生的な本能で大自然を駆け回り、獲物を仕留める術を学んでいくと思ったら、
人の手に渡り、人間を神をして崇め、イヌのように忠実になったり…。
環境の大きな変化で、「オオカミ」と「イヌ」との間をさまよい葛藤していくホワイト・ファングに胸が締め付けられる。
作中に出てくる登場人物にビューティ・スミスってやつがいるんですけどね。
この男、名前とは打って変わって、貧弱で小柄な醜男。
こいつがムカつく!
とても強く、賢いホワイト・ファングに目をつけて、元の主人から汚い手を使って奪い取ろうとします。
この汚い手というのがまた酷くて…。
そんな醜男は、ホワイト・ファングを道具として扱う。
人間の見せ物にされ、嘲笑され、鞭に打たれてはイヤイヤ傷を負うホワイト・ファング。
「愛」に飢え、どんどん兇暴に、どんどんずる賢くなっていく。
信じるものもいない。心を休めることのできる居場所もない。
イヌの血を引き、オオカミとして生まれたホワイト・ファングの行き着く場所とは。
ホワイト・ファングのとてつもなく波瀾万丈な人生は、ジャック・ロンドンの人生に似ているのかもしれない?
後半は感情移入しすぎて、声が出たり、ため息が出たり。
幼い頃からイヌのいる生活をおくっていたので、動物(特にイヌやネコ)が虐待されたり、生涯を終えてしまうような作品って観たり読んだりしたくないんですよね。
でも、この【 白い牙 】は読んで良かった。
実家の愛犬の肉球の香りを、愛おしく思い出しながら読みました。
近々会いに行こう。