【 夜が明ける / 西加奈子 】

夜が明ける 西加奈子 小説

 

再生と救済

 

西加奈子 著

夜が明ける

 

 

直木賞受賞作である【 サラバ! (上) (中) (下)巻セット 】から7年

http://aya2020book.com/サラバ!/

本屋大賞ノミネート作品である【 i (ポプラ文庫) 】から5年

長いこと待ち望んでいた長編作品がついにやってきました!

 

現在はカナダで生活をされている西加奈子さん。

長い時間を費やして書かれた今作は、日本で書き始められ、書き上げたのはカナダだったそうです。

生まれはイラン。その後エジプトで幼少時代を過ごし、大阪へやってきた西さん。

今作のテーマは、現代日本に存在する若者の貧困と過重労働

海外の政情も自らの目で見てきた西さんだからこそ書ける、現代の日本のさまざまな問題がリアルに描かれていました。

 

夜が明ける あらすじ

 

15歳の時、 高校で「俺」は身長191センチのアキと出会った。

普通の家 庭で育った「俺」と、 母親にネグレクトされていた吃音のアキは、 共有できる ことなんて何一つないのに、 互いにかけがえのない存在になっていった。

大学卒業後、 「俺」はテレビ制作会社に就職し、 アキは劇団に所属する。 しかし、 焦がれて飛び込んだ世界は理不尽に満ちていて、 俺たちは少しずつ、 心も身体 も、 壊していった……。

思春期から33歳になるまでの二人の友情と成長を描 きながら、 人間の哀しさや弱さ、 そして生きていくことの奇跡を描く。

本書は著者が初めて、 日本の若者の生きていく上でのしんどさに真正面から取り組んだ作品。

出典 : 夜が明ける

 

15歳の時に、ある俳優の話題がキッカケで距離を縮めた「俺」と「アキ」。

その後、別々の道を歩んでいく二人に待っていたのはとても過酷は世界。

貧困、過重労働、パワハラ…徐々に壊れていく二人。

自分の置かれた状況に目を瞑り、声も上げられず、崩壊へと突き進む。

そんな現代の日本に蔓延る黒い影。

決して勝つことが目的ではない。

生きるヒントがそこには描かれていた。

 

夜は必ず明ける

 

テーマがテーマなだけに読んでいて苦しい。

幾度となく読む手を止めようと思ったことか。

西加奈子作品の中でも断トツと言っていいほどに、苦しくて寂しくて暗い奈落に落とされていく…。

 

奈落と言えば、以前読んだ西加奈子特集の『ユリイカ』で角田光代さんがおっしゃっていました。

 

西さんは次々と新作を書き、私はいちファンとして読み続けた。

読み続けていくうちに、なんだかこの作家はへんだと思うようになった。

その「へん」というのは、私のなかでは恐怖に通じる。

こわいことはひとつも書いていないのに、むしろあたたかい世界のことが書かれているのに、小説の奥の奥のほうで奈落が口を開いている。

その気配がある。

出典 : ユリイカ 2020.11

 

ハートフルで温かい作品イメージがあると思われがちな西加奈子作品ですが、作中に気分が落ちる描写は確かに多いように思う。

最近映画化された「さくら」でも主人公が兄を亡くしたり…。

直木賞受賞作品の「サラバ!」では、何もかもがうまくいかなくなった主人公の葛藤がありましたね。

しかし今作が最強!!

こんなことを書くと作品を非難しているように思われそうですが、話はここからなのです。

 

西加奈子作品は、ドン底から這い上がっていく後半の上り坂が見どころ

以前、西加奈子作品が好きだと言っていたフォロワーさんがこんなツイートをしていました。

 

西加奈子の作品が好きな人は何かしらのコンプレックスを抱えているように思う。

 

全ての人に当てはまるわけではないのかもしれませんが、私は腑に落ちるところがあったのですよね。

人間のリアルで人間臭い部分、弱い部分、恥ずかしくて表に出せない部分…そんな他人事ではない、なんなら親近感が沸いてしまいそうな悩みを抱えている登場人物たち。

そんな登場人物たちの夜が明けていって、それを見た読者はきっと安心するはず。

きっとだいじょうぶ」と思える安心感がそこにはあって、毎度読了後は気が抜けて放心状態になります。

思い起こしても、勇気づけられる作品がたくさんありました。

 

 

なので【 夜が明ける 】を手に取って苦しい思いをしているそこのあなた!

諦めずに最後まで読んでほしい。きっと挫折しないで良かったと思えるはず。

 

寂しさと孤独は違う

 

今作の発売にあたって、西さんが憧れの女性として名を挙げていた小泉今日子さんと対談をしていました。

そこでハンナ・アーレントという哲学者の「寂しさと孤独は違う」という言葉を出して、寂しさと孤独について話されていました。

孤独とは自分との対話をすることだそうです。

一方で寂しさは、孤独をきちんと受け入れられない状態。

寂しい人は、人といたがる。しかし、大勢でいても常に寂しい。

 

西加奈子さんはSNSをやっていないのですが、その理由がここにありました。

SNSとは寂しさを容易に埋めることのできるツールでもある。

自分自身と向き合う時間がなくなって孤独を受け入れられなくなるんじゃないかと不安があるそうです。

確実にツイ廃である私はドキッとしてしまいました。

孤独…と向き合えるかな。

孤独を受け入れるというのはとても怖いものなのでしょうね。

 

孤独を認めるのも辛いのでしょうけど、人に助けを求めることって安易にはできないことじゃないですか?

日本人に限ったことではないかもしれませんが、「助けを求める」「助けられる」は恥ずかしいことって認識がありますよね。

もしくは「助けられる」ことで悔しいと思ったり。

夜が明ける 】では、人にそっと手を差し伸べること。そしてその手を掴めること

 

 

それができる社会になってほしいという西加奈子さんの思いが込められていました。

孤独を見つめて、必要な助けは求める。

自分には、困ったときにあらゆる人に助けてもらう権利があるんだって。

 

 

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