The Modern
中断された展示会の記憶
3.11の震災により福島のふくしま近代美術館で行われていた「アンドリュー・ワイエスの世界」が中止になった。
ニューヨーク近代美術館MoMAからやってきた「クリスティーナの世界」は回収されることになる。
ニューヨーク近代美術館MoMAの展示会ディレクター杏子・ハワード。
ふくしま近代美術館学芸員(キュレーター)長谷部伸子。
二人のクリスティーナへの想いとは。
ロックフェラー・ギャラリーの幽霊
ニューヨーク近代美術館MoMAで監視員をしているスコット・スミス。
ある日「アヴィニョンの娘たち」の前にたたずむ不思議な青年と出会う。
行きつけのバーで借りたピカソの展示会の図録。
その図録で驚くべき真実を知ることに。
そしてニューヨーク近代美術館MoMAで事件が起きる。
私の好きなマシン
ジュリア・トンプソンが初めてニューヨーク近代美術館MoMAへ訪れたのは「マシン・アート展」だった。
そこで初代館長アルフレッド・バーにより『アート』というものを教わる。
そんな尊敬するアルフレッド・バーとの別れ。
彼が導いてくれた人生。
アメリカの大企業へのチャレンジへの道のり。
新しい出口
ローラ・ハモンドは2001年9.11により親愛なる友人セシル・アポットを亡くした。
あの日ワールドトレードセンターにいたのは自分だったかもしれなかった。
マティスを追いかけていたセシル。ピカソを追いかけていたローラ。
二人はまるでマティスとピカソのようなライバル仲でもあり親友でもあった。
そんな中「マティス ピカソ展」が開催される。
ローラの展覧会にかける想いとは。
あえてよかった
日本の私立美術館の学芸員をしていた森川麻実。
1年間だけニューヨーク近代美術館MoMAへ派遣されることになった。
麻実の日課は朝にドーナッツスタンドに立ち寄ることだった。
ニューヨーク近代美術館MoMAで、28歳シングルマザーのパティと出会う。
とても仕事のできる彼女に面倒を見てもらうことになる麻実。
とある展示が気になってパティに相談を持ちかける。
ニューヨーク近代美術館MoMAを舞台にした5つの作品。
モダンアートの殿堂であるMoMA。
「ザ・モダン」とはニューヨーク近代美術館のニックネームでもある。
ニューヨーク近代美術館 MoMA
ニューヨーク近代美術館(The Museum of Modern Art, New York)
英文館名の頭文字をとって「MoMA」と呼ばれる。
原田マハさんの作品「楽園のカンヴァス」「暗幕のゲルニカ」を読んだことのある人にはお馴染みの美術館でもある。
「楽園のカンヴァス」の主人公の一人でもあるティム・ブラウンはMoMAのチーフ・キュレーターであった。
「暗幕のゲルニカ」のゲルニカが保管されたのもこの美術館である。
作者である原田マハさんもこのニューヨーク近代美術館に勤務経験のあるキュレーターです。
原田マハさんのアート作品が好きな人。
「楽園のカンヴァス」「暗幕のゲルニカ」を読んだことのある方には特に読んでいただきたい。
この2作品とも繋がりのある【 モダン (文春文庫 は 40-3) 】。
2作品とは異なるのが、今作はアートではなくそれに関わる人物へ視点を置いている作品であること。
アートを通して人間ドラマがリアルに描かれている。
私たちが日々アートに想いをはせることが出来るのは、原田マハさんや、この作品に登場する人物たちのお陰でしょう。
様々なアート
今作にもたくさんのアート作品が登場します。
表紙にはアンリ・マティスの『ダンス』。
「中断された展覧会の記憶」にはアンドリュー・ワイエスの『クリスティーナの世界』。
「ロックフェラー・ギャラリーの幽霊」にはパブロ・ピカソの『アビニョンの娘たち』『鏡の前の少女』。
「新しい出口」にはアンリ・マティスの『窓辺のヴァイオリニスト』。
パブロ・ピカソの『影』。
他にも細かい部分で登場する名画たち。
展示のセンスや知識ばかりがものをいうのではない。政治力、交渉力、そして忍耐力がなければすぐれた企画展はとても実現できないのだ。そして何より、アートと作品への愛情がなければ。
作中の登場人物のアート作品への愛情に胸が打たれる場面もちらほら。
知らないところで、役に立っていて、それでいて美しい。そういうものを『アート』と呼ぶ。
原田マハさんのアート作品の必須人物でもあり、ニューヨーク近代美術館初代館アルフレッド・H・バー・ジュニアの作中の言葉である。
この言葉がとても深く、作中では一人の少女の人生を導くことになる。
世界一のモダン・アートな美術館『ニューヨーク近代美術館MoMA』。
そこを舞台に繰り広げられる様々なドラマに是非とも触れてみてほしい。
モダン・アートについて更に深く知ることが出来るでしょう。