2022年本屋大賞ノミネート作品!
美しい物語
青山美智子 著
【 赤と青とエスキース 】
青山美智子さんといえば昨年2021年度の本屋大賞にも作品がノミネートされていました。
しかも2位という人気っぷり。
昨年ノミネートされた【 お探し物は図書室まで 】は、心温まる優しいお話でした。
今作は少しテイストが異なり、良い意味で青山美智子さんらしくないと感じました。
今作も本屋大賞にノミネートされるのにも納得!
読み進めていくほどに魅了される素敵な作品でした。
(装丁のデザインも美しい)
赤と青とエスキース あらすじ
メルボルンの若手画家が描いた一枚の「絵画(エスキース)」。
日本へ渡って三十数年、その絵画は「ふたり」の間に奇跡を紡いでいく――。
二度読み必至! 仕掛けに満ちた傑作連作短篇。
出典 : 赤と青とエスキース
金魚とカワセミ
メルボルンに留学中の女子大生・レイは、現地に住む日系人・ブーと恋に落ちる。しかしレイは、留学期間が過ぎれば帰国しなければならない。
彼らは「期間限定の恋人」として付き合い始めるが……。
東京タワーとアーツ・センター
日本の額縁工房に努める30歳の額職人・空知は、既製品の制作を淡々とこなす毎日に迷いを感じていた。
そんなとき、十数年前にメルボルンで出会った画家、ジャック・ジャクソンが描いた「エスキース」というタイトルの絵画に出会い……。
トマトジュースとバタフライピー
中年の漫画家タカシマの、かつてのアシスタント・砂川が、「ウルトラ・マンガ大賞」を受賞した。
雑誌の対談企画の相手として、砂川がタカシマを指名したことにより、二人は久しぶりに顔を合わせるが……。
赤鬼と青鬼
パニック障害が発症し休暇をとることになった51歳の茜。
そんなとき、元恋人の蒼から連絡がくる。茜は昔蒼と同棲していたアパートを訪れることになり……。
そしてエピローグでは、再度読み返したくなるような結末が…。
エスキース
エスキースとは、下絵のことだ。
「下描き」ではなくて、本番とは違う紙や板に自由に描いて構想を練るのだ。
頭の中にあるものを、このリアル世界に落とす最初の作業。
描いているうち新たに生まれてくる光景。
妄想と現実を行ったり来たりしながら作品が創り上げられていく。
「はじまりの儀式」かもしれない。
出典 : 赤と青とエスキース
一枚の『絵画』をめぐって展開されていく物語。
一つ一つが異なった物語のように見える短編。
しかし、一つの『絵画』がその物語を繋いでいく。
終始心地よい気分で読み進めることができました。
とても美しい物語。
個人的には昨年の【 お探し物は図書室まで 】より好きでした。
なかなか注目したことのない、絵画を収める専用の額縁についてや、画商についてのお話もとても興味深かったです、
ただただ、綺麗な物語…じゃないのがこの作品の面白いところ。
物語が進むにつれて、前の章に戻って確かめたくなる。
再度読み直したくなる。
でも、先が気になって一気読みでした!
連作。繋がっていく短編。
中でも私が好きだったのが「トマトジュースとバタフライピー」。
(バタフライピーとはマメ科の植物(ハーブ)、ハーブティーとして使われることが多く、その見た目は青く美しい)
漫画家の師弟の物語で、割と本編とかけ離れる部分もある物語なのでが…。
漫画家・タカシマ剣(ペンネーム)と、そんな漫画家のアシスタント砂川凌。
今や自分よりも売れっ子になってしまったかつてのアシスタント。
そんな元アシスタントへのタカシマの姿勢や接し方。
それに対する砂川は、とても不器用。
この2人の関係が、とても素敵な関係なんですよね。
そしてここでは、漫画家目線で「エスキース」を見つめていくのですが、
絵を描くうえでの「エスキース」は、漫画を描く上での「ネーム」という見方も面白かったですね。
色んな角度や方向から、色んな人間に注目される『絵画』。
その『絵画』の旅路を是非覗いてみてください。
読了後は、【 赤と青とエスキース 】このタイトルの意味にも、胸が熱くなるはずです。