【 ライオンのおやつ / 小川糸 】

ライオンのおやつ 小川糸 小説

2020年本屋大賞ノミネート作品

 

あなたは人生の最後に食べたいおやつは、なんですか?

 

33歳という若さで余命宣告される雫。

瀬戸内のホスピス「ライオンの家」で最期の日々を過ごすことに。

毎週日曜日はおやつの時間があり、入居者のリクエストによってそのおやつが決まる。

雫は瀬戸内の人々と余生を過ごしていきながら「生」について考えさせられる。

そんな最期に雫がリクエストしたおやつとは。

 

「死」というものがどういうものなのか、なかなか難しく遠いもののように聞こえますが、誰しもがその時を迎え、誰しもがそれについて深く考える日が必ずくるでしょう。

 

残りの人生をいかに生きるか(QOL=生活の質)、いかに死ぬか(QOD=死に方の質)

 

きっとあなたも「ライオンの家」で最期を迎えたくなるはず。

ホスピスの名前でもある百獣の王ライオン!

その名前が付けられた訳もとても深い。

お腹がすくって生きている証。ご飯を美味しいと思えるのって生きている証。「安心して食べたり寝たりできる」

 

食事の描写がとてもよく、読者はきっとお腹が空くはずです。

この作品を読んでお腹が空いたり、美味しそうと思ったあなた!

それは生きている証」です。

…私も読了翌日の朝には卵粥を食べていました

 

死を受け入れるとは…?

 

自分自身の最期の時をどう過ごしたいと思いますか?

後悔のない人生をおくるなんて難しいことだと思いますが、今の現状を見つめて、一日一日をもっと大切に、感慨深いものにしたいと思える作品です。

 

更に素晴らしいのが、作品に登場する人物の一人一人がとても個性的で面白いのです。

 

私だったら…

朝、六花のモフモフ毛を撫でながら目覚めて

食堂でかの姉妹の日替わりのお粥に舌つづみを打ち

美味しい空気を味わいながら六花とタヒチくんのぶどう畑へお散歩

絶景を見ながらベンチでタヒチくんとランチ

ライオンの家へ帰って来たら今日は誰のおやつが選ばれるかその時を待つ

おやつの後はマスターの淹れてくれたコーヒーを飲みながらマドンナと談話

アワトリス氏が受けるカモメちゃんの音楽療法を覗いてみたり

夕食にはお肉をリクエストしてタヒチくんのワインもいただく

 

やはり読めば読むほど「ライオンの家」で最期をおくりたいと思い、一日の自分なりのスケジュールなんか考えてみたりする。

 

 

読了後、再度自分だったら最期に食べたいおやつは何だろう?と考えてみる。

それは母親が作ってくれたババロアでした。

そんな懐かしい思い出を振り返りながら涙するはず。

 

生きることは誰かのになること。

自分自身の命をすり減らすことで他の誰かの光になる。

 

読み終えたあなたもこう言うはず

 

ごちそうさまでした

 

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