イヤミスの女王
湊かなえ 著
【 山女日記 (幻冬舎文庫) 】
湊かなえさんと言えば『イヤミスの女王』。
代表作の【 告白 】は、松たか子さん主演で映画化もされていますね。
そしてイヤミスの女王と言えばもう一人、真梨幸子さん。
以前読んだ【 殺人鬼フジコの衝動 】は衝撃的でした。
エログロや狂気的な場面が多い真梨幸子さんの作品とは異なり、湊かなえさんの作品はそういった場面は少なく、物語の構成が繊細なイメージがあります。
イヤ〜な気分になるミステリー「イヤミス」。
後味が悪く、スッキリとしない内容なのに、読む手が止まらず先が気になるあの感じ。
中毒性がありますよね。
私も大好きなジャンルです。
そんなイヤミス界の女王、湊かなえさんですが、今回読んだ作品はイヤミス要素は一切なしの心温まる物語なのです。
湊かなえさんの趣味の一つでもある「登山」をテーマにしたストーリー。
山女日記 あらすじ
こんなはずでなかった結婚。捨て去れない華やいだ過去。拭いきれない姉への劣等感。夫から切り出された別離。いつの間にか心が離れた恋人。
……真面目に、正直に、懸命に生きてきた。
なのに、なぜ? 誰にも言えない思いを抱え、山を登る彼女たちは、やがて自分なりの小さな光を見いだしていく。
新しい景色が背中を押してくれる、感動の連作長篇。
出典 : 山女日記 (幻冬舎文庫)
それぞれに悩みを抱えて山に登る山女たち。
山に登る理由や目的も人それぞれ。
決して楽ではない登山を通して自己と向き合っていく。
非日常の中で、自分なりの答えを見つける。
頂上に広がる景色とともに、心の靄も晴れ渡るかもしれない。
人生という山登りへのヒントがここに。
7つの山とお話
山によって章が分かれているのも面白いところ。
第一章の妙高山は作者である湊かなえさんが登山にハマったきっかけになった山だそうです。
妙高山(みょうこうさん)
新潟県妙高市にある標高2,454mの日本百名山。
![](http://aya2020book.com/wp-content/uploads/2022/01/22746078_s-300x200.jpg)
妙高山
火打山(ひうちやま)
新潟県妙高市と魚川市にまたがる標高2,462mの日本百名山。
![](http://aya2020book.com/wp-content/uploads/2022/01/22877607_s-300x200.jpg)
火打山
槍ヶ岳(やりがたけ)
長野県は飛騨山脈(北アルプス)にある標高3,180mの日本で5番目に高い日本百名山。花の百名山。
![](http://aya2020book.com/wp-content/uploads/2022/01/22470134_s-300x200.jpg)
槍ヶ岳
利尻山(りしりざん)
北海道利尻島にある標高1,721mの日本百名山。花の百名山。
![](http://aya2020book.com/wp-content/uploads/2022/01/23185192_s-300x225.jpg)
利尻山
白馬岳(しろうまだけ)
長野県は飛騨山脈(北アルプス)にある標高2,932mの日本百名山。花の百名山。
![](http://aya2020book.com/wp-content/uploads/2022/01/2288241_s-300x200.jpg)
白馬岳
金時山(きんときやま)
神奈川県にある標高1,212mの日本三百名山。
![](http://aya2020book.com/wp-content/uploads/2022/01/980976_s-300x225.jpg)
金時山と富士山
トンガリロ
ニュージーランドの北島中央部にある標高1,978mの火山。
![](http://aya2020book.com/wp-content/uploads/2022/01/22126826_s-300x187.jpg)
トンガリロ山
カラフェスに行こう
ヤマケイ涸沢フェスティバル。
北アルプス穂高連峰で行われる登山愛好家イベント。
短編集となっていますが、実は少しお話が繋がっています。
あの章で出てきたあの人とこの人がここで繋がる!!
なんてちょっと面白い構成になっているのでチェックしてみてほしいです。
心のモヤモヤと登山
この作品を手に取ったのは、まさにこれを書いている私自身も登山経験者で山登りが好きだからという理由。
と言っても、登山経験は1年未満のまだまだ初心者。
持病を持ってしまい、ドクターストップで脈拍の上がる行為はNGと言われたことがあります。
運動のOKが出た時にその反動で登った陣馬山〜高尾山への縦走登山でまんまとハマってしまいました。
https://twitter.com/Aya2020book/status/1369932125311442949
【 山女日記 (幻冬舎文庫) 】の登場人物のように先の見えない不安を抱えながら登山に挑みました。
木々に囲まれた自然の中を黙々と歩いている時間。
日常から離れて、自分なりに色々と考えることの出来るとても有意義で貴重な時間でした。
由美が大きく深呼吸をした。わたしもおなかいっぱいに空気を吸い込んだ。不満をためこんだまっ黒な腹の中が、ほんの少しきれいになっていくような気がする。
まさにこんな感じです。
山にもよりますが、登山なんて楽なものではないですし、危険やリスクも伴います。
足に乳酸が溜まるような急登続きで辛い思いもします。
一歩間違えたら崖から落下というような危険な箇所もあります。
そんな滑落スポットでは毎回「もう二度とこんな怖い思いはしたくない。もう登りたくない。」と思うんですよね。
なのにまた登る。
目的の山が登れたことで自信がつく気がします。
体力的な面はもちろん、大袈裟かもしれませんが…なんか人生に自信がつくのですよね。
私は体のこともありますが、何かに認められたようなそんな気持ち。
悩みや不安も、憑きものが落ちたようなスッキリとした気分になっていることがあります。
物語の中では登山のあるあるや、登山中のお役立ち情報なんかもあって登山好きな方ならば間違いなく楽しめる一冊だと思いました。
…が!
登山に興味のない人もきっと「分かるわ〜。」って納得しちゃうような日常の悩みやヒントが読み進めていく中で見つかるかも。
そして、もしも登山に興味を持っていただけたら是非山登りもしてみてほしい。
山には登山ルールが沢山存在していますので、マナーを守って気持ちの良い登山を!
私も今年は北アルプスへ出かけたいと思います。